無痛裸足ランへの道〜その5
想像してみてほしい。
高速で唸りを上げて回転するトレッドミル。
その上空に両手を左右のバーにつかまりながら宙に浮いている自分。
高速で動くベルトコンベアに足を接地させる最初の一歩目、
どのように足を踏みおろすのか。
どうすればロス、ダメージが少なくない最良の着地になるかを。
前方へ振り出した足をそのまま投げ出すようなイメージだとどうだろうか。
トレッドミルの進行ベクトルとは正反対のベクトルで足裏が摩擦する。
おそらくその着地点は重心より前よりになっているので、
正反対のベクトルにさらに自重と慣性の力が加わりより摩擦が大きくなる。
大きな音が出て足裏や脳天まで衝撃が突き抜けるだろう。
前方へ振り出した足をそのまま垂直に下ろすイメージだとどうだろうか。
そのまま投げ出すより角度が付いている分、接地位置は重心直下に近づく。
しかし動く地面に対して直角に入力するので完全に摩擦を消し去ることはできない。
スピードが上がり、距離が伸びると、
そのわずかな摩擦でも明らかなダメージをうけることになる。
ではどうしたらいいのか。
動く地面の速度、つまり走るスピードに合わせた同じ速度で、
前方に大きく振り出した足を重心直下に引き戻せばいい。
そのことで高速で動く地面があたかも静止したかのごとく、
重力方向ベクトルも、前後進行方向ベクトルのエネルギーは相殺され、
真空状態のような摩擦ゼロの接地が可能となる。
迫りくる地面を同じ方向性スピードでやさしく迎え入れるという意識たった一つで。
この時の足裏の刺激はその場で足踏み、ジャンプした感じと変わらないものになる。
逆に裸足ランニングで路面が荒れて足裏が痛い、スピードを上げて足裏にマメができた等の原因の根底には「この動き」の拙さがあると思っていい。
野生動物はみな自分の走速度に同調させた「この動き」がある。
Cheetah Full Speed, Slow Motion, HD Camera
だからガレ場でもどこでも悠々と縦横無尽に走破できる。
しかしシューズという文明に飼いならされた人間はこの動きを忘れてしまった。
なぜなら足裏にものを挟みさえすれば足裏の摩擦のことなど考えずに済むからだ。
この究極の接地がもたらす走りのポテンシャル、
俊敏さ、強靭さ、無尽蔵さは、
裸足ランを通してしか、学び知ることはできない。