富士登山競走「裸足サブ4」完走記 その2馬返し〜山頂 - 裸足とワラーチの日々

 

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馬返しの石段を呼吸を整えながら登り、

鳥居をくぐり一礼、厳かなシングルトラックに入る。

 

この石段で呼吸がすでに整い、

こともあろうか、自然に最初の坂道を小走りで走り始めた。

 

これは未体験ゾーンの動きだった。

 

「今日のオレはちょっとヤバイかも」

 

しみじみニヤニヤしつつも変化に富んだ路面に集中する。

 

馬返し〜五合目は低山トレイル的なサーフェースが続く。

 

レース、試走含め、早歩きがほとんどを占めたこの区間

所々あるフラットなセクションも足裏事情と体力的問題から歩き、

そこでごぼう抜かれるというジリ貧レースパターンがお約束だった。

 

それがほとんど抜かれることなく、追い抜くことの方が多いいつもと真逆の展開。

 

周囲のゼッケンもいつのまにか自分と同じ4桁はほとんどみかけず、

 

400〜800番台がコアのゾーンを走っていた。

 

絶好調を感じつつも、鬼門である本八合目〜九合五勺のグズグズの砂礫での失速を考え、セーブしつつ走った。

 

途中の舗装された林道にばら撒かれた裸足難易度的に高い小砂利セクションも疾走しランナーをごぼう抜きした時に

 

ああ、これが「獣化」「ビースト モード」だなとぼんやり感じた。

 

かつて感じたことがないほどのスピードで

 

あっという間に5合目の佐藤小屋の計測マットを通過。

 

電光掲示板で2回目に自分のタイムを知ることになる。

 

 

1時間57分49秒!?!?!!!!!!!

 

「まじか!」

「うわっ、やば!」

 

さすがに声が漏れ出た。

 

2時間切ることは予想だにしなかったし、

 

これは2年前ワラーチで走った時とほぼ同等のタイム。

 

「ありえない速さ!」

 

「しかも身体は軽くなる一方だし!」

 

「これはすごいことになるかもしれない…」

 

興奮を隠せなかった。

 

冷静に2つ目のマグオンを摂取。

 

間髪入れず先に進み始めた。

 

 

 

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後半戦スタート

 

 軽い渋滞を抜けて、砂礫の登りが始まる。

 

アミノバイタルのゼリーの配布を今年もいただく。

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ここでも裸足仲間からエールをいただく。

 

普通に話して応じる余裕がある。

 

  

五合目から上も常にガスっている。

標高が上がるにつれさらに涼しさが増す展開。

 

寒さに強みを見出す自分には絶好の展開。

 

これは助かる。

カンカン照りだったら、間違いなく全く違った展開になっていただろう。

天も山をも味方につけ向かうとこと敵なしの快進撃を続けた。

 

 

 

6合目から7合目の砂礫地帯もこれまで以上にイージーに感じる。

地面が踏み固められてる所がこころなしか多い気さえする。

少々砂礫で足が沈んでも、簡単にリカバリーできる余裕すらある。

 

 

これだけの快進撃を続けているのに、足の疲労は嘘のようにない。

だが一番の難所、本八合目〜九合五勺のグズグズ砂礫の鬼門があるので油断する訳にはいかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

1人、また1人と抜いていく。

 

まわりのシューズの人たちが止まっているように見える瞬間すらあった。

 

この辺りから、

 

立ち止まって休んでいる人

 

攣ってストレッチしている人

 

が増え始める。

 

このレースの本当の勝負はここからなのだ。

 

 

壁や鎖など掴まれるものはとにかく触って手繰り寄せて、腕の力も使って進む。

 

 

 

うしろから靴音をさせず無音で登り抜き去って行くと、

 

 

「えっ?」

 

「マジっすか!?」

 

「これで登ってきたんスか!!」

 

「褌?裸足?ありえない」

 

「まじ、かっこいいっす!」

 

 

他のランナーから、驚異の眼差しで見られる。

 

 

 

おそらく周囲にいたランナーのほとんどは、

異彩を放つこの目障り極まりないランナーを視界から追い出したいと思っていたと思われる。

 

「そのお尻!目のやり場に困る!w」

 

等、後ろから声をかけられ、

 

「すいません!遠慮なく抜いていってください!w」

 

と答えると、

 

「それがなかなか抜けないんだよなw」

 

「エロい!」

 

「サブ4ペースで走ってるんだからエロ速いでしょ」

 

「ワハハハハw」

 

「そのお尻がずっとペースメーカでした。すごい!」

 

こんな感じの軽妙なコールアンドレスポンスが周囲のランナーと何度も生まれ、

みんなで笑いあうような牧歌的なやりとりがさらに気分を盛り上げた。

 

 

 

 

7合目給水所(花小屋)に淡々と到着。

ワンカップ大関の瓶で水を2杯のみかけ水1杯で足早に通り過ぎる。

 

小屋の平地もかなりのハイスピードで走れる!

 

 

ここから溶岩岩場ゾーンに突入。

素手、素足でガシガシ登る。

ここでもシューズのランナーを一人二人ととらえてパスしていく。

 

 

前の選手の後ろについて登るだけで精一杯と思われたセクションを、

別ルートから回り込んでパスしたり、ありえない躍動感で這いのぼる。

 

顔も体も岩スレスレを這うような感じで岩をよじ登る。

岩にしがみつく、重心低く四つ足で。

時折口を開けて舌を出し大きく呻きながら。

 

 

かなり高速で這い上っているにもかかわらず、

 

岩に足をぶつけることは全くなかった。

 

 

以前は裸足登攀可能なラインが点、もしくは1本の線程度にしかみえず時に立ち往生していたセクションを、

本能的に縦横無尽に這い上がる這い上がる。

 

 

追い抜かれたランナーが「ひいいいい!」と声にならない悲鳴をあげていた。

 

 

 

野獣。

 

 

 

間違いなくこの時わたしは野獣だった。

 

 

 

 

次の給水所(太子館)もあっさり通過。

ここで最後のマグオンを摂取。

この辺りは山小屋間が長くなり足裏の神経過敏もピークを迎え、

限界を感じはじめるポイントであるが、

今日は足の裏は痛くもかゆくもない。

相変わらず山小屋前のフラットと傾斜がゆるく締まった斜面では、

走りを交えて登り続けられている。

 

 

 

 

この辺りは意識も朦朧としてきて、

関門まであと山小屋いくつあるか等気になるところだが、

いまどこにいるか、タイムはなどとは全く気にせずに

ただニヤニヤしながら多幸感に満ち溢れた今この一歩一歩を味わい尽くしながら進む。

 

 

標高も上がり汗が冷えてきたがエンデュランスベルトの腹巻効果で要所は冷えることなく進めている。

 

 

 

 

 

 

あと200mで本八合目となる給水所(白雲荘)も軽快な足取りで通過。

この時、当初懸念していた8合目関門の通過をほぼ確信した。

 

 

 

海外観光客のグループが

 

 HUNDOSHI !

 

と写真を撮りながら、笑顔で声をかけてくる。

 

「オーイエース!ジャパニーズトラディショナルファイティングウエア!」

 

とはったりをかますと。

 

「ワーオ!」と感嘆している。

 

 

 

しばらくして、

 

いや、

 

六尺褌世界遺産だ。

 

「ワールドヘリテイジ」と説明すべきだったな。

 

などと後悔する余裕すらある。

 

 

 

難なく富士山ホテル別館、八合目関門通過。

 

時間を見逃し、近くにいたハイカーさんに時刻を確認。

 

10:27

 

これはサブ4間に合うかもしれないぞ!

 

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さあ、最後の勝負だ。

 

 

頂を目指して!

 

 

砂礫の坂道が延々と続く。

 

なぜか今日は試走の時とは全く違うイージーな路面に感じる。

これみよがしにガシガシ登り続ける。

 

 

完走はほぼ確信した。

 

自己ベスト。

 

裸足を侮辱しサンダル履きでなんの感慨もなく無機質に登った

 

2年前の自分の記録を破らなければならない。

 

 全く力むことなく、山頂に向けてビルドアップ。

 

最後はケダモノのように走りごぼう抜きし、

 

これまでに一番近く感じた山頂にゴール。

 

 

タイムは?!

 

 

3:56:28!!!!!!!!!

 

 

小躍りして、雄叫びをあげずにはいられなかった。

 

こんなにゴールをして喜びをあらわにしたのは初めてかもしれない。

 

過去の履物を履いた自分を裸足で軽々と越えたこと。

 

試走の時の馬返し〜山頂とほぼ同じタイムで市役所〜山頂を走ったこと。

 

この自分でも驚きの快走を比喩することばに欠くことはない。

 

裸足無双。

 

そんな快心の走りだった。

 

自分がなしえたこととは到底思えない不思議な感じさえした。

 

 

 

 

 ゴール後、山頂で待っていてくれた裸足仲間と合流。

 

興奮と歓喜を存分に分かち合った。

 

総括につづく。

 

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