裸足ランナーのプライドが崩れるとき
いよいよ今週末、年に一度の裸足ランニングの祭典、飯能ベアフットマラソン&キッズチャレンジ&全日本裸足ラン選手権が開催される。
『BORN TO RUN 』の大ヒットによりベアフット系シューズで走るランナーは増えてきたが、最近ではメーカー側が積極的にベアフット系の製品を投入しなくなり市場の流行としては下火、シューレス素足な真性の裸足ランナーにいたってはそのマイノリティーぶりはすさまじいものがある。その全国に点在する裸足ランマイノリティーが「裸足の聖地飯能」に一同に会するのである。毎年ものすごい化学反応がおきるのは必然である。この異様な熱気をみるためだけでも大会に足を運ぶ価値はある。
年々規模も大きくなるこの大会。個人的には初回から毎回参加、今年で4回目となる。
毎年参加する中で自分も含めた裸足ランナーならではの、あるメンタリティーがあることに気がついた。
裸足ランナーは孤独だ。普段の大会でも周りをシューズランナーに囲まれ、好奇の視線に耐えながら走る。たいていは裸足で走るのは自分一人だ。ひとり別のレースを走るような気分になるのは必至だ。シューズランナーとの勝負に負けることも多い。こころのどこかで「裸足でなかったら負けなかった。裸足でなかったら記録出せていた」とほとんど無意識にひとりごちるようになる。ガラスの負けず嫌い、自尊心を守るためだ。
負けず嫌い(ハングリー)と自尊感情(プライド)の関係性。負けず嫌いだけれど、プライド低いが最善。常にハングリーだけれど、自分をどこか突き放して見てるから負けても傷つかない。最悪は、負けず嫌い強いくせに自覚がなくて、弱いくせにプライドだけ変に高いから傷つかない様に必死なタイプ。
— man@5/17全日本裸足ラン選手権 (@man10000) 2015, 3月 24
そんな空気のように日常化してしみついてしまった言い訳が全く通用しないがこのレースである。
だって、全員裸足だから。
ガラスの自尊心を守るなら、このガチの裸足レースは回避したほうが無難だ。
赤裸々なリザルトは自尊心を粉々にくだいて立ち直れなくなってしまうだろうから。
5000m14分台のランナーやフルマラソン裸足サブ3のランナー、100kmサブ9のランナーなど全国の猛者が裸足でやってくる。勝てる見込みは薄い。
レースに出ないのは勝負してないということ。明確な勝ち負けを明らかにする勝負に負けて、ガラスの自尊心、ちんけなプライドが傷つくのを恐れて、自分はそんなものからは超越していると装って勝負と無縁で安穏と過ごす。
— man@5/17全日本裸足ラン選手権 (@man10000) 2015, 4月 5
このように裸足ランニングは人間性として本来的でできて当たり前なことであるにも関わらず、不当に裸足ランニング人口が少なすぎるため、何ら裸足ランとは本質的に関係のない葛藤をかかえることになってしまいがち。また、マイノリティーの井の中の蛙であるが故、裸足なら自分が1番だと勘違いしやすい。自分と深く向き合うという裸足ランの性質から、自我が病的に肥大してしまいやすいのかもしれない。
またおもしろいもので、裸足ランニング導入で一番ネックとなるのがこの「自尊感情」の取り扱いかただったりする。
裸足ランは正論すぎて、時にできない人を酷く傷つけてしまう。
裸足ランナーが真のどMなのは足裏の痛みの強さからではない。駆け出しの頃の人として当たり前のことができないというセルフイメージの崩壊、自我の危機状態を耐え忍び、時間をかけてできない自分に真摯に向き合い技術を習得してきたその過程にある。
— man@5/17全日本裸足ラン選手権 (@man10000) 2014, 11月 12
直球ど真ん中の球がまったく打てないかすりもしない事実。これはタイヘン自我の危機。あらゆる方法で隠蔽しなければ、ガラスの自尊心が保てない。隠蔽しきれなければ卑屈になる他ない。
— man@5/17全日本裸足ラン選手権 (@man10000) 2014, 11月 12
妙ちくりんな自尊感情という名のプライドに翻弄されることが少ないから、裸足ランの導入は女性の方が上手くいき易い気がする。
— man@5/17全日本裸足ラン選手権 (@man10000) 2014, 11月 12
裸足ラン普及の成否はこの自尊感情をどう取り扱うかにかかっている。
— man@5/17全日本裸足ラン選手権 (@man10000) 2014, 11月 12
ニンゲンのプライドはかくも厄介なものである。
もし、あなたの近くの裸足ランナーや、やけにムキになってアンチ裸足ランニングな雰囲気を醸し出すランナーがいて、近寄りがたい、「めんどくさい」何かを感じたとしたなら、「ああこの葛藤によりこころが屈折してるのだな」とあたたかく見守ってほしい。
ガチンコでこころがヒリヒリするこのレース。本当にたのしみだ。